2020年12月4日(金) リモート研究会
2020年12月4日(金)リモートで聖書と精神医療研究会の理事会および研究会が開催されました。
研究会では河村冴理事が、創世記の登場するイサクとリベカの家庭に存在した両親の子育ての課題に着目し、研究会の年間テーマ「虐待」との関連で「えこひいき・偏愛」の問題を発表しました。以下に、研究発表の一部を紹介します。
偏愛(虐待)から機能不全家族へ。しかし…
偏愛により真っ二つに分かれてしまった家庭
イサクとリベカの間に生まれた双子の兄弟エサウとヤコブは性格もライフスタイルも正反対だった。父イサクは兄エサウを偏愛し、母リベカは弟ヤコブを偏愛した。その結果家族は真っ二つに分かれ、両者の間には長い冷戦が続くことになってしまった。
家庭内の問題が子育てに与える影響
「家庭内に冷戦が起こると子どもの心身の成長にも深刻な影響が生じる。福井大学とハーバード大学がアメリカ人を被験者として研究したところ、日常的に両親の暴力や暴言を見聞きしてきた子どもたちは、脳の視覚野の一部が萎縮し、更に記憶力や学習に影響が出る可能性もあるという。
年齢層と学歴が同じ若者から、夫婦間の身体的暴力を目の当たりにしてきた人と、言葉の暴力に接してきた人を抽出し、脳をMRIで調べたところ、双方とも脳の一部が萎縮していたが、身体的な暴力を見てきた人は萎縮率が3.2%だったのに対し、言葉の暴力は19.8%と6倍も高かったという。
日常的に両親の暴言に接すると、脳の海馬や扁桃体に異常を来し、怒りや不安を感じやすくなる上、視覚野の一部も萎縮し、記憶力や学習能力が低下する。そして暴言のみならず夫婦間冷戦による「無視」によっても、悪影響が生じると考えられている。
イサクとリベカの夫婦関係を断じることまでできないが、家族間冷戦の主体として息子たちの心身へ悪影響を及ぼしたであろうことは容易に想像できるのであり、それは虐待とも言い得るのである。」(河村)
家庭は崩壊し、それぞれの計画は崩れるが……
偏愛の問題を抱えたヤコブ一家はやがて「長子の権利」をめぐって完全に家庭崩壊してしまう。
「長子に与えられる祝福」をめぐっては、父イサク、母リベカ、兄エサウ、弟ヤコブはそれぞれ自分の計画を持っていた。しかし彼らの計画は崩れ、それぞれが悲しみの道を歩むことになってしまった。しかしその中にあっても歴史の真の支配者である神は着実にその計画を進めていかれた。
神は、欠けだらけのヤコブをイスラエルの祖先としてたててくださり、彼の子孫を通して全世界に祝福をもたらされたのである。
「子育てに失敗しようと、機能不全家族が崩壊に至ろうと、『神の計画はそれでも成る』ところに、私たちの希望があるのではないか。お世辞にも模範的とか、理想的とはいえないような家庭からイスラエルが生み出され、救いの歴史が開かれたことを思えば、どこの家庭にも大いに望みを持って良いと言えるのである」(河村)